2024年のアジア新興国経済は緩やかな拡大を続けたものの、国ごとにその拡大ペースやモメンタムは様々であった。例えば、インドネシア経済は年後半から減速感が強まった一方、2023年に景気が減速したベトナム経済は同時期に景気拡大が加速した。日系企業の観点から関心の高いタイ経済は緩慢な拡大が続く。
アジア新興国経済に影響の大きな中国経済は総じて期待が先行してきた。また、9月下旬以降、当局は一連の刺激策を発表し、一時的な期待感が更に高まった。ただ、本稿執筆時点ではその期待を裏打ちするほどの実体経済の改善は統計上確認できていない。中国経済の内需の落ち込みが長期化すれば、そのインパクトは特に東南アジアに強く波及する可能性が高い。
国際金融市場に目を転じれば、2024年11月5日に実施された米国大統領選挙や米連邦準備制度理事会(FRB)の動きに関心が集まり、米ドルは大きく上下した(図表1-1)。トランプ前大統領が当選し、次期米大統領に就任することが決まって以来、国際金融市場では米国でインフレが再加速するとの懸念が強まっている。