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2025年1月号(No. 650)バックナンバー
新年にあたって(大使)
シンガポール日本商工会議所の皆様、新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、昨年のシンガポールからの訪日観光客数は、一昨年の過去最高記録の約59万人を大きく上回る見通しとなりました。首都の東京や冬の北海道はもちろんのこと、私も最近は政界・経済界問わず、「中山道を歩いてきた」というシンガポリアンの声を耳にすることも多くございます。旅行者の約75パーセントがリピーターであり、ある意味日本人よりも日本のことに関心を持ってくださっているシンガポールの方々は、我々にとって本当にありがたい存在であると認識しております。
こうした中、今年は大阪で半世紀ぶりに万博が開催されます。歴史を紐解くと、第二次世界大戦後に開催された万博はこれまで10回しかなく、そのうちの3回は何と日本での開催でした。そもそも複数回の万博を開催した国は日本だけであり、実は日本は万博先進国なのです。こうした大阪・関西万博のコンセプトの一つは、伝統と最先端の共生です。関西地方は、1200年を超える歴史を持つ古都である京都・奈良をはじめ、日本の豊かな歴史的遺産に触れることができる地域であるとともに、茶道や生け花、能や歌舞伎といった日本を代表する伝統芸能の発祥地でもあります。同時に関西地域は、ライフサイエンスやバイオメディカルといった最先端分野で数々のイノベーションを実現してきたグローバル企業の発祥地でもあります。日本政府としては、このような関西地域の特性を活かして、伝統的な文化や社会を活かしながら、現代の課題に対処し、持続可能で活力ある人類社会を創生していく方法を共に考えられる場にしていきたいと考えております。万博の開催まで残り100日を切りました。当館としても、当地におけるプロモーションをさらに加速させてまいりますので、JCCIの皆様におかれましても、一層のプロモーション活動にご協力いただけますと幸甚です。
日本経済に目を向けますと、今から約30年前、日本のGDPは世界の18パーセントを占めておりましたが、直近ではわずか4パーセントにまで落ちました。配当は増え、海外投資も増えた一方で、国内投資と賃金は伸び悩んできました。デフレ経済の中で雇用は安定してきたものの給料が上がらないという状況が続いておりました。しかし、昨年ようやく約30年ぶりの高い水準の賃上げと、過去最大規模の投資が実現し、明るい兆しが現れています。当館としても、DXを切り口として、AI、量子、バイオ、宇宙、GX等の戦略分野のイノベーションに向けた各種支援を進めていくとともに、スタートアップ先進国であるシンガポールの地の利を活かし、日本とシンガポール間における大企業とスタートアップとの共創に向けた取組についても、全力でサポートしてまいります。
今年の干支は、「乙巳(きのとみ)」です。「乙」は未だ発展途上の状態を表し、「巳」は最大限まで成長した状態を意味します。この両方を備えた「乙巳」は、これまでの努力や準備が実を結び始める時期を示唆しています。今年はシンガポール建国60周年という節目の年でありますが、来年は日本とシンガポールとの外交関係樹立60周年のダイヤモンドジュビリーを迎えることになります。まさに乙巳のように、来年に向けていくつもの仕込みを計画的に準備して実を結んでいく、今年はそのような一年にしたいと思います。
最後になりましたが、JCCIの皆様が日頃から日星間の経済関係を支える活動を精力的に行っていただいておりますことに改めて感謝申し上げます。これまでの継続的なご尽力を讃えるとともに、益々のご発展と会員企業の皆様のご多幸、ご健勝を心より祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。